2.燃焼性

多くの有機過酸化物は、分解物としてメタンやアセトンなどの可燃成分を発生します。この可燃成分の発生とともに、燃焼している炎からの伝播熱に加えて過酸化結合の分解で発生する熱が供給されるため、有機過酸化物の燃焼速度は一般的な有機化合物に比べてはるかに高速となります。
また、過酸化結合に起因する特性ではありませんが、有機過酸化物の中には、一般的な有機化合物と比較して引火点や発火点が低いものがあります。例えば、引火点が低いジターシャリーブチルパーオキサイド(ジアルキルパーオキサイドの一種)や発火点が低いメチルエチルケトンパーオキサイド(ケトンパーオキサイドの一種)などに対しては、引火や自然発火を防ぐための対策が必要とされます。

3.異物との接触による分解
有機過酸化物は熱による分解のほかに、ある種の異物との接触により分解が促進される場合があります。この分解の起こりやすさは、異物および有機過酸化物の種類によって異なります。 分解を促進する異物として、コバルト塩などの促進剤、鉄イオンなどの還元性を有する金属塩、アミン類、強塩基、濃硫酸などの強酸が挙げられます。強酸化剤、強還元剤も分解を促進します。 有機過酸化物の中でも-OOH基を有するケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドは特にこれらの異物と敏感に反応し、パーオキシケタール、ジアシルパーオキサイドもこれら異物により分解しやすい性質をもっています。
異物による分解反応は常温でも容易に進行します。いったん反応がおこると大きな発熱を伴う高速反応となり、制御が困難となります。

4.衝撃・摩擦による分解

有機過酸化物は、本来、衝撃・摩擦に鋭敏です。衝撃・摩擦による分解を防止するために、製品形態においては、必要に応じて溶剤や不活性媒体で希釈するなどこの特性を緩和するための工夫が施されています。
ただし、粉体のベンゾイルパーオキサイド(ジアシルパーオキサイドの一種)には注意が必要です。水ウェット化手法により摩擦・衝撃への感度が緩和されていますが、水が揮発して含水量が減少すると摩擦・衝撃に対して分解を引き起こす可能性が出てきます。分解時の威力は非常に大きく、水の揮発防止対策が必要とされます。

5.酸化性
有機過酸化物の中で、過酸とハイドロパーオキサイドのみが強い酸化性を発現します。ほかの有機過酸化物は、還元剤に対して弱い酸化性を示す程度です。過酸化水素は酸素を発生する強力な酸化剤として知られていますが、有機過酸化物の反応では酸素が発生することはほとんどありません。