有機過酸化物の取扱いルールと安全のためのガイドライン
有機過酸化物には非常に多くの種類があり、それぞれの有機過酸化物を安全に取扱うためには、ラベル、製品カタログ、SDSに記載されている特性と安全対策を十分に理解することが重要です。
有機過酸化物の取扱いや貯蔵方法などについて不明の点があれば、製造業者に相談してください。
1.輸送、取扱い、貯蔵時の重要な4つの管理項目
1)温度管理
有機過酸化物による暴走分解、気相爆発につながる可能性のあるガスおよびミストの発生、自然発火、品質低下を防ぐために、温度は最も重要な管理項目となります。
有機過酸化物がその市販の包装形態で促進分解を引き起こす(7日間で6℃以上の温度上昇を引き起こす)最低温度を自己促進分解温(SADT)といい、この温度以上になると有機過酸化物が分解して発生する熱量が周囲に放散される熱量を上回るため、時間とともに有機過酸化物の温度が上がって分解速度を加速して自己促進分解の状況を発生させてしまいます。
これは、温度がSADTを十分に下回っていればほとんどの危険は回避されることを意味しており、そのための温度管理が不可欠です。
市販の有機過酸化物のSADTは−10℃から200℃の範囲内にあり、有機過酸化物の構造と荷姿によって決まります。
SADTに基づく輸送時の温度管理基準がUNモデル規則で勧告されています。安全が確保できる最高輸送温度を「管理温度(CT)」、緊急対応を必要とする温度を「非常温度(ET)」と定義し、SADTから導き出しています。
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SADT |
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管理温度(CT) |
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非常温度(ET) |
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SADT≦20℃ |
SADT−20℃ |
SADT−10℃ |
20℃<SADT≦35℃ |
SADT−15℃ |
SADT−10℃ |
35℃<SADT≦50℃ |
SADT−10℃ |
SADT−5℃ |
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CTは長時間に渡る輸送でも安全が確保できる温度の上限を示しています。
ETは、CTとSADTの間に設けられています。例えば、冷凍設備にトラブルが発生して補修が必要になった場合、ドライアイスなどの代替冷却剤が到着するまでに温度が上昇してしまうことも想定され、対処が間に合わずCTを越えるようなことがあれば、安全確保のために人の避難や有機過酸化物の緊急廃棄などを実行しなければなりません。
ETは、このように万が一のトラブルが発生した場合に、何らかの処置、対策を必要とする温度を示しています。
CT、ETは輸送時の温度管理基準として設定されたものですが、取扱い、貯蔵に際しても、安全性確保のための温度管理基準として適用できるものです。
貯蔵温度は、有機過酸化物の品質を保持するための温度です。通常、CTより低く設定されています。有機過酸化物はどんな温度でも分解を起こしますが、その分解を最小限に抑え、一定期間、有機過酸化物の品質を決められた範囲に保持する温度をいいます。有機過酸化物の種類によっては、ある温度以下で、濁り、相分離、結晶析出、あるいは固化などを発生することがあります。これらの現象は非常に危険なため、その防止も考慮して貯蔵温度は設定されていますので、製造業者が指定する温度を厳格に守る必要があります。貯蔵温度はそれぞれの有機過酸化物のラベルや、技術資料に示されています。
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