7.危険物輸送に関する国連勧告

本勧告は、包装容器に収容された危険物の、陸上(鉄道/道路)・海上・航空輸送において、「人」「財産」「環境」の安全を確保するために、国連経済社会理事会の下部組織「危険物輸送専門家小委員会」で策定され、各国の関係官庁・関係国際機関に対する勧告として出されているものです。
最新の技術情報に基づいて、2年毎に更新されています。「各国あるいは関連国際機関における危険物輸送に関する新規則の制定あるいは改正時に、本勧告に沿った改正を促し、輸送モード間、あるいは各国の規則の違いによる障害を減らしていく目的のために制定していること」を唱っています。
危険物は9つのカテゴリーに分類され、そのなかで、有機過酸化物は「クラス5:酸化性物質及び有機過酸化物」の「区分5.2:有機過酸化物」に該当し本勧告の対象とされています。
有機過酸化物の輸送のみならず、貯蔵、取扱い、使用などにおける安全対策の重要な指針になりますので、2020年段階で国内法規にも反映されている「モデル規則 第20改訂版(2017年)」および「試験方法および判定基準のマニュアル 第6改訂版(2015年)」から有機過酸化物に関係する部分を抜粋して紹介します。

(モデル規則より)

2.5章 クラス5 酸化性物質及び有機過酸化物

(注) クラス5に属する酸化性物質と有機過酸化物が示す危険性は異なっており、同じ尺度で判断することは実際的ではないため、本章では区分5.1(酸化性物質)と区分5.2(有機過酸化物)に分けて、それぞれに対する試験方法及び判定基準を示している。

2.5.1  定義および一般規定

(b) 区分 5.2 有機過酸化物
2価の-O-O-構造を分子内に持つ有機化合物で、水素原子の片方もしくは、両方を有機基で置き換えた過酸化水素の誘導体とみなせる。
有機過酸化物は、熱的に不安定な物質であり、発熱自己促進分解を起こし得る。また、以下に示す中の幾つかの特性を有している。
i )
 爆発的分解を起こし易い。
   
ii )
 急速に燃焼する。
   
iii )
 衝撃または摩擦に敏感である。
   
iv )
他の物質と急激な反応を起こす。
   
v )
目に損傷を及ぼす

2.5.3 危険区分5.2有機過酸化物

2.5.3.1 特性
2.5.3.1.1 
有機過酸化物は、常温または高温で発熱分解を起こしやすい。分解は熱、異物との接触(例えば酸、重金属化合物、アミン類)、衝撃、摩擦によって引き起こされる。分解速度は温度が高い程速くなるが、その程度は有機過酸化物の種類によって変わってくる。分解によって有害、あるいは可燃性のガスや蒸気を発生する場合もある。ある種の有機過酸化物については温度管理が必要である。有機過酸化物の中には、特に密閉下では、爆発的な分解を起こすものがある。この特性は希釈剤を加えたり、適切な包装形態にすることによって緩和できる。多くの有機過酸化物は激しく燃焼する。
2.5.3.1.2 有機過酸化物が目に入る事のないようにしなければならない。ある種の有機過酸化物はわずかな接触であっても角膜に重大な損傷を与え、皮膚に対して腐食作用を示す。

2.5.3.2 有機過酸化物の分類
2.5.3.2.1 
すべての有機過酸化物は、以下に示すものを除いて区分5.2に分類されなければならない。
a) 過酸化水素の含有量が1.0%以下で有機過酸化物からの活性酸素量が1.0%以下の有機過酸化物。または
b) 過酸化水素の含有量が1.0%を超え7.0%以下のもので、有機過酸化物からの活性酸素量が0.5%以下のもの。
   注:有機過酸化物組成物の活性酸素量(%)は次式により得られる。
           16 × 煤ini×ci/mi
      ここで ni =有機過酸化物の分子当りの過酸化結合の数
           ci =有機過酸化物iの濃度(質量%)
           mi =有機過酸化物iの分子量
2.5.3.2.2 有機過酸化物はその危険度に基づいて、タイプAからタイプGまでの7つに分類される。有機過酸化物のタイプは、試験に供された包装形態では輸送が認められない可能性があるタイプAから区分5.2の有機過酸化物の規定が適用されないタイプGまでがある。タイプBからタイプFに属する有機過酸化物は、本規定で定める単位包装あたりの最大数量規制の対象となる。

2.5.3.2.3 へ続く