有機過酸化物の紹介

有機過酸化物とは?

下記の一般式で示され、分子内に酸素- 酸素結合(過酸化結合)を
有する有機化合物の総称


R1- O- O- R2


ある種の有機化合物は空気中の酸素と反応して過酸化結合を形成するため、我々の周りには少なくない種類の有機過酸化物が存在しています。油絵で使う乾性油はその一例で、乾性油が固化するのは、空気中の酸素との反応で形成された過酸化結合が油の分子間に橋架け反応を起こすためです。また、多くのプラスチックが脆くなったり、ぼろぼろになったりするのも、プラスチック分子に過酸化結合が形成され、その分解反応が原因になる場合が多いことが知られています。 ただし、本ホームページでは、有機過酸化物のうち工業的に製造され利用されている特定の有機過酸化物だけを対象としています。
有機過酸化物は、この過酸化結合に起因する以下の共通する特性をもっています。

熱に敏感である。
  分解により遊離ラジカルを生成する。
  分解時に熱が発生する。
  分解時にはガス(分解生成物)を発生してミストを形成する場合があり、燃焼しやすい。
  コンタミに敏感である。
  (特定構造に限定されますが)衝撃・摩擦に敏感である。
  (特定構造に限定されますが)酸化作用を有する。


有機過酸化物の歴史


有機過酸化物の利用が始まったのは比較的古く、1800年代、小麦粉の漂白剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)が使われだしたのが始まりです。
その後1900年代に入り研究開発が進み、特に1930年代に合成高分子が重要な化学産業の1つとして脚光を浴びるようになりました。効率的な有機過酸化物重合開始剤に対する要求が高まり、活発な研究開発が行われるようになり、現在に至っています。
また、有機過酸化物の危険性に対する評価技術の開発も精力的に進められ、飛躍的に向上しました。国連の専門部会(日本もその一員)で、危険物の輸送に関し、危険性評価の標準化・危険分類・輸送のための細目等について討議され、危険物輸送に関する国連勧告(オレンジブック)という形でとりまとめられています。有機過酸化物についても詳細にわたり勧告がなされており、各国では国連勧告に基づいた法規制が進んでいます。
日本でも、危険物の航空・海上輸送取扱いについては、国際間にまたがるケースが多いこともあり、国連勧告、またそれに基づく国際機関(IMO・IATA・ICAO等)の技術基準を全面的に取入れています。一方、陸上輸送に関しては、それぞれの国内環境・事情・歴史背景もあり、各国独自の規定によるケースがあります。
有機過酸化物の国内陸上輸送・取扱いは、主に消防法によって規制されています。消防法の場合、危険物の規定は、可燃物を対象としており、国連勧告の危険物分類とは定義が異なること、消防法は輸送取り扱いだけでなく、製造,貯蔵も含む全体にわたった規定ということもあり、国連勧告との相違がみられますが、一部、整合性が取れるよう規則の改正も行われてきています。