有機過酸化物工業でよく使用される用語

●活性酸素量(A.O)
遊離ラジカルの形成に利用可能な有機過酸化物に含まれる酸素の量をいい、過酸化結合由来の酸素原子1つの重量パーセントとして表されます。有機過酸化物中の過酸化結合から生成する遊離ラジカルの数量を示す指針となります。また、その商品の濃度や、純度の計算に使用されます。

活性酸素量(%) =
過酸化結合の数×16
×純度(%)
分子量

●半減期

有機過酸化物の50%が分解するまでの時間を半減期といい、指定された時間に有機過酸化物の50%が分解する温度を半減期温度といいます。一般的には「1時間または10時間半減期温度(半減期が1時間または10時間になる温度)」という表現が用いられ、有機過酸化物を選択する場合の判断基準となります。有機過酸化物がほぼ完全に分解するには、半減期の7〜8倍の時間がかかります。

●SADT(自己促進分解温度)
有機過酸化物は温度(熱)に敏感です。種類によって差がありますが、どんな温度でも分解は起こり発熱を伴います。温度が低い場合は分解が遅く発熱量も小さいため、熱は外部に放出されて有機過酸化物の温度が上がることはありません。しかし、温度が高くなると分解速度が上昇して、発熱量は大きくなります。この結果、分解により発生した熱が外部に放散しきれず有機過酸化物自身の温度を上昇させてしまいます。温度上昇が分解速度をさらに加速するため、―自己促進分解―という現象が生じ、ついには爆走して火災や爆発事故を招く場合があります。SADTは有機過酸化物がいずれ自己促進分解を引き起こす環境温度をいい、一定量の容器に入った状態で、7日以内に6℃以上の発熱または自己促進分解を引き起こす最低温度として定義されています。会員各社の技術資料に示してあるSADTは、有機過酸化物が出荷される包装形態における値です。自己促進分解の起こりやすさは熱の放散/蓄積のバランスに依存します。有機過酸化物の量が多かったり、断熱性が高い容器に入れ替えたりすると蓄熱しやすくなり、SADTよりも低い温度で自己促進分解を引き起こしますので、詰替え、あるいはタンクで貯蔵する場合には注意が必要です。

●管理温度と非常温度
温度に敏感な有機過酸化物を安全に輸送するために、輸送時の温度上限が決められており、この温度を管理温度といいます。また、管理温度とSADTの間に非常温度が設定されています。非常温度は、安全を確保するため、速やかに何らかの処置、対策をとる必要がある温度です。

SADT
管理温度
非常温度
SADT≦20℃
SADT−20℃
SADT−10℃
20℃<SADT≦35℃
SADT−15℃
SADT−10℃
35℃<SADT≦50℃
SADT−10℃
SADT−5℃

●貯蔵温度
有機過酸化物はどんな温度でも分解を起こしますので、時間の経過とともに純度低下、品質劣化を招きます。貯蔵温度は、一定期間(品質保証期間)の品質を保持するために決められている温度です。


●爆発(爆燃・爆轟)
爆発とは圧力の急激な発生又は解放の結果、容器が破裂したり気体が急激に膨張して爆発音や破壊作用を伴う現象をいいます。
爆発のうち、膨張速度(炎の伝播速度)が音速に達しないものを「爆燃」、膨張速度が音速を超えるものを「爆轟」と呼んで区別します。爆燃が衝撃波を伴わず、被害が比較的に軽微であるのに対し、爆轟は衝撃波を伴い、甚大な被害を及ぼします。