有機過酸化物の特性と安全対策

有機過酸化物の安全性(危険性)及びその輸送・貯蔵・取り扱いに当たっての注意事項について、OPPSD(Organic Peroxide Producers Safety Division)より、かなり簡潔にまとまった報文(有機過酸化物の安全性ならびにその取り扱い指針)が出されておりますので、その概要を含めて考え方を紹介いたします。参考にして下さい。

有機過酸化物の特徴的な性質
非常にたくさんの種類の有機過酸化物が存在しますが、すべて、その化学構造の中に過酸化結合を少なくとも1個持っております。この結合は、通常は熱によって切れてフリーラジカルを発生させます。このラジカルが重合の開始、あるいは他の要求物性を付与させます。また、この分解により、熱と副成物が発生します。
分解速度は有機過酸化物の種類によって異なり、常温での分解速度の速いものは、冷凍での貯蔵・輸送が必要です。分解速度の遅い有機過酸化物の場合は、常温あるいは常温以上の温度での貯蔵・輸送が可能となります。この過酸化結合は熱に敏感な結合であり、有機過酸化物が共通して持っている以下の特性の主因となっています。 

     熱に敏感である。
     分解時に熱を発生する。
     分解により遊離基(フリーラジカル)を生成する。
     コンタミに敏感である。
     分解時にガス(分解性生物)とミストを発生する。
     弱い酸化作用を有する。


1.分解を誘発する温度
有機過酸化物の分解を起こす特定な温度というものはありません。
どんな温度でも分解を起こしますが、その分解速度は温度によって変わってきます。
有機過酸化物の分解速度は、温度が高くなると急激に上昇します。その上昇速度は、他の大多数の化学反応における上昇速度の比ではありません。温度が上がるにつれ反応速度は上がっていき、ある温度以上では反応速度が異常に速くなり、大量の熱と反応生成物(多くの場合、ガス状の反応生成物)が発生するようになります。
通常、分解時に発生する熱は外部に放散されますが、もし、発生する熱量の方が放散する熱量より大きくなる場合は有機過酸化物の温度が上がり、分解をさらに加速させます。その分解は自己促進の状況になり、非常な高エネルギー組成物となり、制御不可能になってしまいます。特に、密封下での急速分解は非常な高温高圧状況を造り出し、より高速分解へ(爆轟)移行する場合があります。
熱分解中は、ほとんどの有機過酸化物は、少なからず、生成するフリーラジカルを含む分解生成物との反応も起こします。これは分解が進むという事を意味しますので分解速度を上げる事になります。他の有機過酸化物との混合の場合も含め、他の化合物で希釈される場合、この希釈剤も反応の対象物になります。ある希釈剤では反応をおさえる場合もあるでしょうし、ある場合には反応を促進する、あるいは,分解のスタイルを変えてしまう事もあります。また,特に注意を要するのは固体の有機過酸化物の分解挙動です。固体の状態では分子運動が制限されるため、本来の分解速度に比べ分解速度は非常に遅くなり安定化しますが,溶剤等に溶解した状態では、制限が取れてしまうため、本来の分解速度を示すようになるということです。例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドあるいはビス(p−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等は25℃付近の常温でも比較的長期にわたって安定性を保ちますが,溶媒等で希釈液状化させますと,不安定になり,保冷・冷凍貯蔵が必要となってきます。
有機過酸化物を速い一定速度で加熱していくと、見た目で明らかに分解が起こっていると判る温度が発現します。この温度を急速加熱分解温度(RHDT)と呼びます。また,有機過酸化物組成物がその市販の包装形態で上記の促進分解を引き起こす(7日間で6℃以上の温度上昇を引き起こす)最低温度を自己促進分解温度(SADT)と呼びます。 高エネルギータイプの有機過酸化物で分解温度(SADT/RHDT)の低い有機過酸化物の場合、暴走反応を引き起こす可能性が高いといえます。なお、SADT/RHDTは、希釈溶液中で測定される半減期温度とはまったく別のものであります。

 

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