有機過酸化物の構造と希釈剤による特性変化

有機過酸化物の特性は過酸化結合に由来しますが、有機過酸化物の「熱安定性」、「化学的活性」、「危険性」は過酸化結合に結びついている有機グループ(置換基)によって決定されます。また,有機過酸化物は、作業性、安全化、安定化などを目的として、希釈剤が加えられている場合が多く、この希釈度合も有機過酸化物の「化学的活性」、「危険性」を決定する重要な因子となります。
半減期温度を尺度とする「熱安定性」は置換基の種類により変わります。高分子工業の分野で利用されるラジカル反応条件(温度、時間など)は多岐に渡ることから、それぞれの条件に適する有機過酸化物の選択を可能にするため、低温から高温まで半減期温度の異なる様々な有機過酸化物がラインアップされていますが、その「熱安定性」は置換基を変えることによって調整されています。
有機過酸化物は、単独、希釈剤が加えられた組成物のいずれも場合も、過酸化結合の濃度が「化学的活性」とSADT等を尺度とする「危険性」の程度を示しており、これを「活性酸素量」という指標を用いて表しています。「活性酸素量」は遊離ラジカルの形成に利用可能な有機過酸化物に含まれる酸素の量をいい、過酸化結合由来の酸素原子1つの重量パーセントとして示されます。

活性酸素量(%)= 純度(%)×(過酸化結合の数×16)/分子量

有機過酸化物の置換基が小さいほど、組成物としての希釈度合が低いほど(高濃度化)活性酸素量は大きくなり、化学的活性や危険性は増大する方向に向かいます。逆に、有機過酸化物の置換基が大きいほど、組成物としての希釈度合が高いほど(低濃度化)活性酸素量は小さくなり、化学的活性や危険性は抑制される方向に向かいます。